夫を亡くしたあと、後悔だけが残るとき
ふとした夕方に、急に来ることがあります。 もっと優しくできたはずだ。あのとき、なぜあんなことを言ったのだろう。生きているうちに気づきたかった。 時間が経つほ…
ふとした夕方に、急に来ることがあります。 もっと優しくできたはずだ。あのとき、なぜあんなことを言ったのだろう。生きているうちに気づきたかった。 時間が経つほ…
一日じゅう張りつめている人に、ゆるむ時間はあるのでしょうか。 朝から晩まで気が抜けない日が続くと、ゆるむという感覚そのものが分からなくなります。 同じ一日で…
外を車が通る。 隣の部屋で誰かが動く。 時計の秒針が、急に大きく聞こえてくる。 昼のあいだは聞こえていなかったはずの音が、夜になると全部こちらへ届きます。 …
マットは出したまま、床に座って十分が過ぎます。 着替えはしました。時間も空けました。それでも、立ち上がる合図が出てきません。 こういう日は、月に何度かありま…
部屋の隅に積まれたまま、何週間も動いていない山がある。 やらなければいけないことは、はっきりしています。 手をつければ終わる。それも分かっています。それでも…
「まとめて眠れたのは、いつが最後だろう」 夜中に一度目が覚めて、時計を見て、また眠る。それを二度、三度。朝になると、眠った気がしない。 本人はもう、それが自…
もう関わりのない相手のはずなのに、帰り道で後ろを振り返る。 電話が鳴ると、一瞬体が固くなる。 家に着くまで、どこかで気を張っている。 本人は「もう終わったこ…
朝、鏡の前で立ったときに気づく。 体の真ん中が、どこかずれたまま止まっている。お腹に力が入らない。何年も前の出産なのに、あのとき以来ずっとこうだ、という感じ…
夕方、机に向かっていて、体が妙に静かなことに気づきます。 その日の朝に一つ済ませたきり、あとは普通に過ごしただけです。それなのに、夕方のほうが落ち着いている…
買い物の途中で、急に胸のあたりが締まる。 何でもない場面なのに、心臓が速くなって止まらない。 早く家に帰りたい、とだけ思う。 久しぶりにあんなふうになった、…
書類にしるしを入れて、封筒を出しに行きました。それで終わりのはずです。 家に帰っても、何も起きません。うれしくもなければ、ほっとしてもいない。ただ、いつもの…
緊張しているかと聞かれて、していないと答える人がいます。 本人の実感としては本当です。困ってもいないし、慌ててもいない。それでも、肩は上がったままだったりし…
「あの人はもう次に進んでいる」 朝の電車でそう思った瞬間から、その日の残りが落ち着かなくなります。何をされたわけでもないのに、追われている感じだけが残ります…
困ったときに連絡する相手が、頭に浮かばないことがあります。 友人はいます。家族もいます。それでも、この件はこの人には言えない、という選別が先に走ります。 相…
肩は、意識していないときにいちばん上がっています。 人に言われて初めて気づく。下ろしてみると、下ろせる。けれど数分後には、また元の位置に戻っている。 連休が…
横になった時間は足りているのに、なぜ休んだ感じがしないのでしょうか。 七時間眠っても、朝の体は前の日のままです。 眠っているあいだも、体は見張りを続けている…
夜、布団のなかで、昼間の受け答えをもう一度やり直しています。 あそこはこう言えばよかった。あの言い方は重かったかもしれない。何度でも再生できます。 済んだこ…
会議の席で、発言を求められそうな空気になる。目を合わせないように、手元の資料を見る。 「私には無理」 そう言い続けてきた人ほど、実際に試したことは少ないもの…
話し始めた、その最初の一分。 何を話そうか考えていたはずなのに、口を開く前に涙が出てくる。悲しいわけでもなく、つらい話をしているわけでもない。自分でも、なぜ…
「おかえりなさい」と言われて、思わず「ただいま」と返していました。 言ってから、自分で驚きます。その言葉を、長いあいだ使っていなかったからです。 住む場所は…